君の宛名は。

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 見覚えのない宛名の書かれたハガキが届いた。 『赤塚 洋子 様』  アカツカ・ヨウコ? ━━誰だ、それは。 私の名前は、北沢真梨(きたざわ まり)。一文字も被っていない。 『H市N区三丁目5ー3 ベルファームハイツ 305号』  表に書かれた宛先は、一字一句間違いなく真梨の自宅住所だ。  このアパートに越してきたのは一ヶ月前。  長年付き合っていた彼との同棲生活が解消され、やむなく探した部屋だったのだけれど。  取り急ぎで決めたわりには住み心地がよく、「もっと早く、一人になればよかった」という気持ちにさせてくれた。 「前の住人かな……転居届くらい出そうよ、赤塚洋子さん」  ダイレクトメールならば破って捨ててしまうところだが、裏面には丁寧な手書き文字が書かれていた。 『洋子、元気かい?俺が悪かった。やり直そう。突然訪ねても会ってくれないだろうし、君の携帯番号もメールも変わってしまって連絡が取れないので、手紙を書いた。本当に反省している。正人』 「正しい人と書いて、マサト? 何をやらかしたんだよ、マサト」  真面目な人柄を彷彿させる神妙な文面と、堅物の象徴のような送り主の名前に、思わずツッコミを入れた。  そして、もしも自分が洋子の立場だったらと、置き換えてみる。 「ウゼー……」  どうしたものかと思いつつ、マサトからの手紙は、ひとまず手元に保管した。
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