53人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
「お母さん、料理のこと聞いたら、なんか機嫌悪かったもんね」
「だって適当にしかやってないのに、美穂子が “これどれ位入れるの?” とか聞いてくるから」
「だって!聞かないと分からないもん」
「だから、そこが適当なんだって」
母の手際の良い畳み方を眺めながら、昔のことを思い出していた。一緒に料理した数少ない記憶。私が「どれ位?」って聞くと、母が「そんなの適当!」って答える、そんなやり取りが思い出された。
「だからか、お母さん。私が結婚する時、分厚い料理本くれたね」
「あぁ、あれねぇ」
母は笑いながら何かを思い出している様子だった。
「美穂子に料理のこと聞かれても答えられないから、これでも渡しとけ、って思ってね」
最初のコメントを投稿しよう!