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そこから先の話が、少し言いづらくなり、私は畳んだバスタオルに顔を埋めた。最近変えたばかりの柔軟剤の匂いが鼻をくすぐる。変えて良かった、グリーン系の香りで落ち着く気がする。
――ここから先、母に話して良いのだろうか?
少しの間躊躇してしたけれど、私は顔を上げて話を続けた。
「あとからお父さんが私に電話してきて、二人で行っても良いか、って…」
「二人って、どの二人?」
「だから、今、一緒に住んでる女性と…」
“女性”が一番言いづらかったけれど、ついに言ってしまった。
母が闘病していた三年間、母に付き添いたいと言った私の希望を優人さんが聞き入れてくれて、私たち家族は両親と同居していた。
その後も、私はそのまま父の面倒を見ながら、実家で暮らしていくつもりにしていた。ずっと“マスオさん”状態で暮らしてくれていた優人さんも、それで良いと言ってくれていた。
婿に入った訳でもないのに、ずっと暮らすのならと、家のリフォームまで計画してくれていたのに。
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