死亡の証明を手紙で

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 翌日、会社の総務が「除籍謄本なのに死亡の記載がない」と、ぼやいていていたが、私はA市が出した正式な除籍謄本と言い切り、突き出してやった。 ***  しばらくして、A市が令和×年以降の戸籍記録を、大量に紛失したことがニュースで報じられて知った。あの職員、絢斗を騙しやがって! それから数日後、A市から届いた封筒を開けた。絢華の死亡日時などについての問い合わせが同封されており、嬉々として書き込んで返信する。  前の会社では、妻に逃げられたと、うそぶいていた。私が夫婦喧嘩の末にカッとなり殺め、自宅の押入れに詰め込んだ絢華は、法律上も死人となったのだ。  一か月程たったある日の夜、刑事が訪ねてきた。 「これが家宅捜索礼状。容疑は公文書偽造。あなた奥さんの死亡届け出てませんよね? 前の会社では、奥さんに逃げられたと話していたのに、今の会社では亡くなったって話しているそうですね」  刑事の話では、A市は“死亡届(しぼうとどけ)”は五年間保存しており、戸籍の作り直し作業で、私の嘘がバレたのだ。家宅捜索で絢華の死体が見つかる! 父親が殺人犯になってしまう、絢斗の心中を考えると胸が痛む。(完)
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