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白雪の仮面
今日は楽しい夏まつり。神社に並ぶは夏の風物詩。
聞こえてくるのは、人々の浮かれた声と足音。
だけど、私はその中にはいない。
明かりのない神社のはずれ、暗い森の入り口。私はそこにいた。
私は今、絶望していた。
高校のクラスメイトの達也くん。かっこよくて優しいクラスの人気者。
私は今日、達也くんと祭りを楽しむ……はずだった。
勇気を出してかけた言葉。
『来週の祭り、一緒に回らない?』
彼から返事が来たのは、誘った1週間後。ちょうど祭りの前日。
『ごめん、一緒には行けない』
彼の口から出たのはその一言だけだった。
きっと彼は妹さんと行くのだろう。小学生のかわいい妹さんと。
私は寂しく思いつつ、肩甲骨まである髪を1つに結び、お気に入りの浴衣を着て1人祭りへ足を運ぶ。
私はそこで見てしまった。
目に入ったのは浴衣を着た楽しそうな彼。それと——可愛い浴衣で着飾った隣のクラスの咲奈ちゃんの姿。
美人で気が強い咲奈ちゃん。咲奈ちゃんの周りにはいつも誰かがいるほどの人気者。
きっと彼女も達也くんを祭りに誘ったのだろう。
彼が私の誘いを断ったのは、きっと彼女から誘われたから。
どこにでもいる平凡な顔でいつも目立たない私なんかより彼女を取るのは普通に考えて、当たり前のこと。
でも、私はそれが悔しくて、悔しくて、仕方がなかった。
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