村上に宛てられた手紙

5/8
前へ
/8ページ
次へ
◇◆◇  あの日はいつものように秘密基地を作った帰りだった。制作に二ヶ月もかかった基地がついに完成したこともあり、夢中になりすぎて帰りが遅くなった「日が落ちるまでには帰って来なさい」という言い付けを守らなければいけない。当時の俺には「少しぐらい」と、いう概念はなかった。今となっては後悔しかない。  ――――走って帰る途中、飯島は車に跳ねられた。  彼は急いで俺の後を追ったのだろう、街灯の無い薄暗くなった道は、小学生の飛びだしを隠した。後ろで大きな音がしたが、怖くてそのまま走った。赤色の横断信号の点灯する道で、小さな命は燃え尽きそうになっていたことも、無視してしまった。  数日後、飯島は一命を取り留めたことを先生から聞いた。嬉しかった。また一緒にあの基地へ行けると思った。  下半身が動かなくなった飯島は一度も学校へ来ることもなく、転校した。  俺は彼に謝ることも出来なかった――――
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加