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「可愛い過ぎんだろ……」
「え? ……」
「なぁ、今どんな顔してるか自分でわかってる?」
「そんなのわかる訳ないだろ……」
「じゃぁさ、見せてやるからそのまま顔近付けてみろよ。」
「何言ってんだよ……」って動揺して目が泳ぐなしもっちゃんに「ほらほら、早く!早く!」って急かしたら、戸惑いながらもゆっくりと顔を近付けてきた。
視線は逸らしたままだけれど。
なしもっちゃんの顔をこんなに近くで見るのは初めてだ。
睫毛、長いんだな……
「どう? 俺の目に映ってるでしょ?」
「そんなの、わかんねぇよ……」
「ちゃんと見て。」
戸惑いながらもゆっくりとなしもっちゃんの瞳が俺を捕らえる。
「見てもわからない……」
「わからないかー。じゃぁ……いや、やっぱりいいや。」
こんなに可愛い顔は俺だけが知っていればいい。
「おま、おまえなぁ……」
あーあ。また赤くなった。耳まで真っ赤だ。
なしもっちゃんの緩んだ手から手首が解放されて、今度は俺がなしもっちゃんの肩を掴んで引き寄せた。
「……近い。」
「ねっ。もうひっついちゃいそうだね。どうする?」
「マジかよ……」
「あぁ、でも先生いるのか。」
「バカ。そんなのここに来た時に追っ払った……鍵も閉めたし……」
「マジか! 準備良すぎない? 」
「邪魔されたくなかったから……」
「正直この展開は予想外だったけど。」となしもっちゃんはそう言って、メガネをクイッと押し上げた後でゆっくりと目を瞑った。
あぁ、やっぱり睫毛長いな……
唇より先にメガネのフレームが鼻の頭に触れて、だけどそんな事はどうだってよくて。
「ファーストキス……晴に取られた。」
「バカ……取ったのは昭だ。って、今晴って……」
「ずっと呼んで欲しかったんでしょ?」
「うん……」
ぎこちない、ほんの数秒のキスは味なんてわからなくて、ただ唇ってあったかいんだなーって事だけはわかった。
名前を呼ばれて、照れながら嬉しそうにはにかむ晴の顔が恐ろしく可愛いって事も。
やっと春が来たと思ったら、晴だったなんてね。
でもまぁいいか。晴になら触れられるから。
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