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保健室の前で、ドクンドクンと脈打つ心臓にそっと触れた。
落ち着け。もうすぐだよ。もうすぐだから。と心の中でマイハートに語りかけてからそっと扉を開く。
「あの、すいません……ちょっと体調が悪くて……」
体調が悪いのは本当だ。嘘は言っていない。
「少し寝かせてもらってもいいですか?」
これは嘘です。ごめんなさい。俺が今から寝る事は絶対にない。
保険医の先生の優しい笑顔に少しだけ胸が痛んだけれど、今は痛みよりもドキドキが勝っている。
ベッドの横のカーテンを閉めて、鞄の中からキラキラを取り出し、すぐにベッドの中へ潜り込んだ。頭の上までしっかりと布団を被ってから……ってこれじゃ何も見えない!
すぐに少しだけ隙間を作って、窓からの光を頼りにクローバーのシールをゆっくりと丁寧に剥がした。そして中に入っている便箋を取り出そうとした時にふと思った。
あれ? そういや、名前書いてないな。
あれれ? そういや、 俺の名前も書いていない。
封筒の表と裏を何度確認してみてもそこには何一つ文字は見つからなかった。
……もしかして、俺宛じゃなかったりして?
と、少し不安になってきたけれど、いやいや、だって俺の靴箱に入っていたし俺宛で間違いないでしょ。とそこは持ち前のポジティブを発揮して改めて便箋に目をやる。
あぁ、胸がはち切れそうだ。音が鳴るくらいにゴクリと息を飲む。
その時だった。
カーテンの外から聞き慣れた声が聞こえてきて、聞きなれた声は少し焦っているような気もして……
次の瞬間、シャッとカーテンは勢いよく開かれ、布団をめくりあげられて、驚く間も与えずに気付いたら目の前に顔があった。
なしもっちゃんだ。
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