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「昭……手紙にも書いたけど、俺はずっとおまえの事が好きで、おまえみたいなどうしようもない奴のどこが好きなんだって何回も考えたけど、好きに理由なんかなくて、とにかく好きで好きで仕方なくて。だけどずっと言えなくて……だって言ったら拒否されるのわかってたし……何度も諦めようと思ったけど諦められなくて。もういい加減疲れちゃって、どうせダメなら自分から離れようって……だからおまえが約束守らないのわかっててあんな事言ったのに、言ったそばから後悔して。口聞けなくなるなら、その前にもう言ってしまおうって思った。だけど流石に面と向かって言う勇気はなくて、だから手紙……書いたんだ……」
とんでもない早口で、時折言葉を詰まらせながらなしもっちゃんはそう言った。
泣きそうな顔はもう泣き顔に変わってた。
俺の手首を持つ手は震えていた。
正直頭は混乱している。だけど漫画の話じゃないんだって事にはようやく気が付いた。
約束を守らないとか、口が聞けなくなるとか、そこは確定しないで欲しかったけど。
どこが好きなんだってとこもちょっと、いやかなり引っかかるけど。
あの手紙……そうか、そうだったんだ……だからか。
おかしいって思っていたんだ。
こんなにだらしなくていいかげんな俺にいつも漫画貸してくれるし、絶対趣味は違う筈なのに何を借りても漫画の内容はドンピシャに好みだったし、いつも返すのを遅れてもグチグチ言いつつ許してくれてたしさ……
だいたい、性格が正反対の俺となしもっちゃんがこんなに仲良くなれたのはなしもっちゃんがいつも俺を気にかけて、何をしても許してくれていたからだ。
最初に声をかけてくれたのもなしもっちゃんだった。
恥ずかしそうに、「何読んでんの?」 って俺の漫画を指差して。そこから色々と話すようになったんだよな。
何かと説教したり、グチグチ言っていたのも照れ隠しみたいなものなのか? 俺と話したくて仕方なかったとか?
なんて、流石にこれはポジティブが過ぎるだろうか。
それにしても、俺を好きになって悩んだ挙句、俺の事を諦めようと思った末に言った言葉が
「おまえとはもう口を聞かない。」
だったなんて。
しかもその言葉をすぐに後悔して、どうせダメならって開き直ったくせに直接は言えないから手紙を書くとかさ……
ちょっと待ってよ……そんなのさ……
そんなの……
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