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朔は、夢の中でいつも紫野が居た、手紙を見つけたあの部屋へ向かった。
そこには紫野が微笑みながら待っていた。
「朔、思い出してくれてありがとう。私はあなたにその手紙を渡したかったの。私の想いを伝えたかった。あなたがあの頃の龍太郎さんと同じ歳になったら…この手紙を渡して、気持ちを伝えたいと…思い出してもらえないかもしれないけど、それでも…。いつも願っていたら、あなたの夢の中で会えて、本当に会えた、思い出してもらえたわ…。」
紫野は涙ぐみながら、朔をまっすぐに見つめて言った。
「紫野…ありがとう。俺も紫野と同じ気持ちだった。あの頃も、これからも。」
「ありがとう、龍太郎さん。いいえ、朔。でも、私はもう行くべきところへ行かないと…。あなたにあの手紙を渡して、気持ちを伝えられたから…。これからもずっと見守っています。あなたの幸せを願いながら…。」
「紫野…!!俺は今、生まれ変わってここにいる!ずっと待ってる!だから、また一緒に…」
朔は消え行く紫野の手を咄嗟に握って、真剣な眼差しで伝えた。
紫野は涙を流しながら微笑み、小さく頷いた。
光が包み込む。涙の雫が輝いて、紫陽花があの頃のように咲いていた。
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