食物連鎖革命

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「最近人間増えすぎだよなぁ。もう70億人超えたって話じゃねぇか。」 破壊神は眉間に皺をよせながら、手持ちのトランプを眺めていった。 「そうじゃなぁ。なんか環境汚染やら地球温暖化やら、ちょっと調子に乗ってるところはあるかもしれん。」 創造神と破壊神の二人は、丸い純金製のテーブルを挟んで、トランプで暇をつぶしていた。 「しまいには、戦争とか言って人間同士で殺し合ってるらしいぜ。このまま放っといていいのかよ?」 破壊神はそういいながら、ジョーカーのカードを場に投げた。 「むぅぅ…。パスじゃよ。しかしここまで数が増えてしまって、今さらどうするというのじゃ?」 先ほど出たジョーカーで場が流れたテーブルの真ん中に、破壊神は四枚のカードを出した。ハートとダイヤとスペードとクローバーの3である。 「なにっ…!」 破壊神はにやりとほくそ笑みながら言った。 「ほら、革命だよ。」 僕たち人間が、食物連鎖の底辺にたたき落とされたのは、何の前触れもない突然の出来事だった。 我が家の愛玩動物であるトイプードルのマロンが、全長3mを超えるほどに巨大化していた。マロンはその巨体を揺らしながら、リビングでぐっすり寝息をたてている。 気づかれないようにそっとリビングを通り抜け、僕は慌てて外に出た。するとそこには、子供の頃に見た怪獣大決戦のような惨状が広がっていた。 東京のタワーの周りに巨大ミミズが巻き付いており、巨大アリがテレビ会社の本社の球体を運んでいる。東京湾には巨大なザリガニがシャチを捕食し、空には巨大飛空艇のようなカブトムシが飛んでいた。 「なっ、なんだこれ…。一体、どうなってんだよっ。」 夢でも見ているようだ。黒い影が頭上を覆い、見上げるとそこにはオオワシが飛んでいた。ただし、大きいといっても、全長10mを超える馬鹿な大きさである。 優雅に舞うその怪鳥は、突然茶色の長いロープのようなものに襲い掛かられた。それはどうやら全長20メートルを超える蛇であった。 超巨大蛇は、オオワシを丸のみにしてしまった。すると突然真っ赤なロープのようなものが大蛇を襲った。そのロープの先を見ると、全長20メートル近いみどりのアマガエルがいた。 しかし、そのアマガエルの後ろにもさらに巨大な影があった。全長30m越えるハエが、カエルに後ろから襲い掛かり、口元の太い針のようなものを突き刺そうとしている。 僕は思わず目を覆い、急いで家の中へと戻った。 玄関の開く音が鳴ってしまい、マロンがご主人さまのおかえりにダッシュで駆け寄って切った。 もの凄く嬉しそうな顔で、マロンは僕にじゃれついてきた。尻尾をぶんぶんと振り回す度に、家がめちゃめちゃになった。 「おおうっ!?落ち着けっマロン!!」 両腕を広げて全力で撫でてやると、マロンはゴロンと腹をみせて横になった。こんな巨大な身体になってしまっても、やはりうちの犬は可愛かった。 「何がなにやら…。」 僕はテレビのリモコンの電源を入れた。すると、いつも朝にやっている報道番組のコメンテーターが映った。 画面したには、緊急速報のテロップが流れている。 そこには『人類滅亡か!?』という何やら物騒な文字が流れていた。 「全世界で生き物たちが巨大化しています…!人間のみなさんは、頑丈な建物内に避難をしてください!」 先ほど見た動物たち…。鳥が蛇に喰われ、蛇がカエルが喰われ、カエルがハエに喰われていた。 なるほど、食物連鎖が逆転しているのである。 僕の後ろから生温かい息が吹く。振り向くと、そこにはマロンが巨大な口をあけて、僕を丸のみにしようとしていた。 僕ははっと目が覚めた。愛犬のマロンが、ぺろぺろと僕の顔を舐めている。よかった…。夢だったんだ。 あまり人間が好き勝手なことばかりしていると、いつかそんな大きなしっぺ返しを食らうかもしれない。 生きるためには食べる必要がある。普段当たり前にしている食べるという行為は、よくよく考えてみると残酷な行為ともいえる。 その辺がどうにも見えずらくなっている現代だからこそ、僕たちはそのありがたみを忘れている節がある。屠殺場にでも社会見学に行くと、また考え方も変わるかもしれない。 焼肉屋に行くと、隣りの客も、そのまた隣の客も、店にいるみんなが当たり前のように肉を食べている。もちろん僕も肉を食べる。魚も食べる。野菜も食べる。虫は…食べたくはないけど、蚊やハエなどの虫を殺したことだってたくさんある。 農林水産省のデータでは、一年間に日本人が食べている家畜の数は、およそ豚で10000000頭、牛は1000000頭、鳥は殺処分も含めて1200000羽くらいらしい。これを多いと見るか少ないとみるかはなんともいえないけど、それだけの数の命を頂いている。 世界規模でみると、僕たちは毎日何十万もの家畜を殺している。 それが悪いこととはいわないのだけれど、食事で何か物を食べる時、ペットしかり何かしらの生き物と関わるとき、ふと命について考える時間をもってもいいのではないだろうか。 なんていうとノイローゼになってしまうかもしれない。 あなたが今食べているそれ…こんな小説読みながら食べないで、感謝の気持ちをもって食べましょう。
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