二.花街の少女

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 不穏な会話を交わしながら、冒険者どもがこの大岩の周りをしつこくうろついている。    と、いきなり俺の首筋に違和感が走った。  ぐりぐりと、何か細く鋭い物が首の中へと刺し込まれてくる。  ……槍だ。  ご丁寧にも、冒険者が俺の隠れた岩の間に、手槍をねじ込んできたらしい。  だが今の俺には痛みは無力だ。  しかも上げる声さえない。  ……死んだ体で良かった。    すぐに槍は引き抜かれ、不審そうな男の声が聞こえた。 「……いないか。まあ仕方ない。始末しておいた方が無難だが、人里は遠い。放置してもそれほどの危険はないだろう」 「そうよね。日が暮れるまでには、ルディアの街に着きたいわ。ベッドでゆっくり寝たい」 「ああそういや、ルディアにはいい花街があるんだよな。久しぶりに気持ちいいことしてえ……」 「女の前でそれ言う? まったく、これだから男って生き物は……」 「まあそう言うな。とにかくルディアはここから道沿いに二時間くらいだ。急ごう」  くだらない話をしながら、冒険者連中は大岩から離れていった。  奴らの足音も気配も消えてから、さらに時間をおいて、俺はずるずると岩の間から這いずり出た。  辺りはもう黄土色の斜陽に包まれている。  人の姿はない。
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