309人が本棚に入れています
本棚に追加
忘れていた安心が、俺の爛れ切った全身に広がってゆく。
……疲れた、ような気がする。
よろよろと崩れるように下草の上に座り込み、岩にもたれかかった。
だが俺の体は、何の感触も覚えない。
ここまで逃れてきたごつごつの砂利道も、柔らかなはずの下草も。
この『疲れた』という感覚それ自体が、やはり俺の気のせいに過ぎないのだろう。
……俺の体はとうに腐りはてた死体に過ぎない。
呼吸も鼓動も、この体からは一切生じない。
何とも言えない、突き放されたような寂しさと虚しさが、俺の内に重苦しい。
ため息の一つでも出れば、我と我が身を憐れむ気分にも浸れるだろう。
だが今の俺には、それさえも許されてはいないのだ。
心の中で自嘲的な笑いを思い浮かべてから、俺は改めて周囲を見渡した。
ここは、どこか山林の只中だ。
人気のない小道と、俺が隠れていた大岩だけがひっそりと存在している。
鳥も鳴かない静けさに身を置いて、俺は心の中で吐息をつく。
……一体、俺に何が起きているのか?
そもそも、俺は何なんだ?
その答えを求めて、俺は今までのことを思い返してみる。
最初のコメントを投稿しよう!