二.花街の少女

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 忘れていた安心が、俺の爛れ切った全身に広がってゆく。  ……疲れた、ような気がする。  よろよろと崩れるように下草の上に座り込み、岩にもたれかかった。  だが俺の体は、何の感触も覚えない。  ここまで逃れてきたごつごつの砂利道も、柔らかなはずの下草も。  この『疲れた』という感覚それ自体が、やはり俺の気のせいに過ぎないのだろう。  ……俺の体はとうに腐りはてた死体に過ぎない。  呼吸も鼓動も、この体からは一切生じない。  何とも言えない、突き放されたような寂しさと虚しさが、俺の内に重苦しい。  ため息の一つでも出れば、我と我が身を憐れむ気分にも浸れるだろう。  だが今の俺には、それさえも許されてはいないのだ。  心の中で自嘲的な笑いを思い浮かべてから、俺は改めて周囲を見渡した。  ここは、どこか山林の只中だ。  人気のない小道と、俺が隠れていた大岩だけがひっそりと存在している。  鳥も鳴かない静けさに身を置いて、俺は心の中で吐息をつく。    ……一体、俺に何が起きているのか?  そもそも、俺は何なんだ?    その答えを求めて、俺は今までのことを思い返してみる。
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