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――気が付いたら、俺は浅い穴の底に転がされていた。
暴かれた墓穴だった。
文字どおり、墓穴から這い出た俺が見たものは、鬱蒼と生い茂った藪の中にぽつり、ぽつりと頭を出した、十数基の石碑。
あるものは倒壊し、あるものは摩耗しきった墓碑だ。
そこは打ち捨てられ、荒れ放題に荒れた共同墓地だったようだ。
地面に散乱した大腿骨や肋骨、それに髑髏は、何かの野獣が食い荒らした跡なのだろう。
もう百年は放置された、そんな荒涼とした場所だ。
だが腐りきった死体の俺が旅立つには、ふさわしい場所ではあった。
しかし俺はどこへ行って、何をすればいいというのだろう?
『因果の呼ぶ方へ行け』?
『贖罪』?
頼るには、余りにもあいまい過ぎる言葉だった。
唯一、あのパペッタとかいう怪しい女が口にした具体的な地名が、『アリオストポリの久遠庵(カーサ・アンフィニ)』だ。
アリオストポリ、聞いたことがある気もするが、今の俺の腐れた脳に、確かな記憶は見つからない。
……ああ、何が何だか分からない。
だが俺の本当の体、生きた体がそこにあるのなら、行くしかない。
今いる場所がどこで、目指すべきアリオストポリがどこなのか、何も理解できないまま、俺は山中に打ち棄てられた共同墓地を出た。
とにかく人里を目指し、アリオストポリへどう向かえばいいのか、情報を得なければならなかった。
だが今の俺は、動き出した腐った死体。
言ってみれば、一匹の“怪物(モンスター)”だ。
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