二.花街の少女

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「同感ね」  ハーネマンがうなずいた。 「この花街の人たちは、マイスタさんの言うことなら疑わないから、少なくともあのひとにはそう思わせておいた方がいいわね。幸い、このひとは受け答えができるみたいだし」  そこでハーネマンの眼鏡の奥の瞳に、深い疑念が湧き上がった。 「でもそのパペッタっていうひとは、どうしてこのひとを『屍者』にしたのかしら?」 「『贖罪』のため、でしょ」  ユディートが華奢な肩をすくめる。 「屍者くんを屍者にしたことがどう贖罪になるのか、今はまだ分からないけれど。でもパペッタは、屍者くんの記憶を操作してるみたいだから、そのうち本人には分かってくるかも」  そこでハーネマンが、お医者鞄の中から真っ白な太めの包帯を取り出した。 「さ、座って下さい。楽にして」    女医の指示に従って、俺は床に再びしゃがみこむ。  ハーネマンも、同時に床へと膝を着いた。 「このひとは”酷い全身ガス壊疽”、ということにしておきましょう。後でマイスタさんに一筆書いてあげるから。死に至らないのは、ユディートさんの法力の影響ということにしておけば……」
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