二.花街の少女

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 山道を彷徨ううちに、不覚にも流しの冒険者たちに見つかってしまった。  連中からすれば、今の俺はいい獲物だ。  腕試しにもなるし、酒場でのちょっとした武勇伝や名声にもつながる。  しかし距離があったため、追い付かれる前に岩の間に隠れ、何とか連中をやり過ごした。  だが冒険者など、世間ではありふれた連中だ。  これからも幾度となくこういう目に遭うと想像すると、先が思いやられる。  パペッタの嘲笑めかした忠告『退治されないように気を付けろ』。  それが、今さらながら身に染みた――  そこまで思い返し、俺は滲み出る腐汁に塗れた両手で、髪もまばらな頭を抱える。  ……『贖罪』、とはどういうことだ?   俺が何をしたというのか……?    俺はさらに記憶を辿る。  あのパペッタに逢った暗闇のその前に、俺の知りたいことがあるはずだ。    それなのに、思い出すことができない。  鏡で死体の俺と対面した、その時以前の俺を。  霧がかかっているとか、見えない壁があるとか、そういう感覚とは違う。    ……空隙なのだ。  あたかも俺など存在していなかったかのように。  だから糸口さえ掴めないのだ。  俺が本当は何なのか、俺の名前さえも。    それだからこそ、行かなくてはならない。  女屍霊術師パペッタの待つ、アリオストポリの久遠庵へ。  自分の体と、自分自身を取り戻すために。
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