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「九鬼さん、彼は福井さんが一番信頼を寄せている部下です」
「はぁ⁉」
福井の名前が出た途端九鬼の顔色が明らかに変わった。
「敵対関係にあるはずの菱沼組と九鬼総業が最近やけに仲がいいという噂を聞き付けまして、なにか裏があるのではと探ってました。なるほど、こういうことですか」
冷たい眼差しで九鬼を見下ろす森崎。
「人として恥ずかしくないんですか?」
そう吐き捨てると遥の手首を掴み九鬼の体の下から引っ張り出した。
「遥さん、大丈夫?」すぐに和泉が駆け寄り着ていた上着を脱いで、遥の薄い肩に羽織らせた。
「直矢に言わないで。お願いだから」
泣きながら和泉の胸にすがり付き必死に訴える遥。
直矢にだけは心配を掛けさせたくなかった。誰よりも一番大切な、かけがえのない宝物だから……
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