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「森崎、何でお前がいるんだ」
驚いて飛び起きる直矢。慌てて遥の体にタオルケットを掛けた。
「別に隠さなくてもいいですよ。遥さんの裸は一度見てますので」
「一度?」
怪訝そうに眉を寄せる直矢。
「な、直矢、あ、あの……」
耳まで真っ赤にし狼狽えまくる遥。
「どういうことだよ」
申し訳なさそうに目を伏せ顔を逸らした父親を鋭い口調で問い詰める直矢。
「遥さんはむしろ被害者ですよ、直矢さん。あのまま鷲崎の家にいてもお二人は幸せになれないでしょうね」
「お前は何を言いたいんだ」
「いっそこのまま駆け落ちしたらいいんですよ。色恋沙汰に鈍感な鷲崎に、愛とは何かを教えてあげるんですよ。もしかしたら改心するかも知れませんよ」
森崎から渡された浴衣に急いで袖を通す直矢。遥にも浴衣を着せた。
恥ずかしいのか頬を染めもじもじと腰を揺らす父親の仕草があまりにも可愛くて、すぐにでも押し倒したい気持ちをぐっと堪える直矢。
人混みで溢れかえる表通りへと手を繋ぎ飛び出した。
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