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「どうしたの直矢?」
急に押し黙った息子に声を掛ける遥。
「見ず知らずの俺たちを快く引き受けてくれて、何かと面倒をみてくれる信孝さんに焼きもちを妬いている自分が許せないんだ。パパに働いて貰わないと生活が出来ないことくらい分かっているけど・・・・」
そこで言葉を止めると、上唇を軽く噛み締めた。
信孝は愛妻家で有名だ。十六も年下のナオと結ばれ、血の繋がりはないものの二児の愛息に恵まれた。家庭を何よりも大切にし、その上絵にかいたようなイクメン。
パパだってきっと俺みたいなガキより、信孝さんみたいな大人の男性がいいはず。
それが嫌なくらい分かるから余計に歯痒かった。
「ねぇ直矢ーー」
息子の頬に両手をそっと添える遥。
「パパね、誰でもいいって訳じゃないの。直矢だけだよ、好きなのは」
顔を真っ赤にしながら精一杯背伸びして、つま先立ちになりチュッと直矢の薄い唇にキスをした。
「パパ!」予想外のまさかの行動に直矢は驚いて目を見開いた。
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