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勤務先のドアの前で二度三度ため息をつく遥。さすがに三日連続遅刻はまずいよね。仏の顔も三度までというし………
信孝さんに理由を正直に話して素直に謝ろう。意を決しドアノブに手を置くと、勝手にドアが開いたからビックリした。
「すみません信孝さん、今日も遅刻しました。ごめんなさい」
謝罪の言葉を口にしながら深々と頭を下げた。
「パパ、だぁ~れ?」
「ねぇ、パパ」
耳に入ってきたのは信孝ではなく子供の声だった。
恐る恐る顔を上げると、大きな目をくりくりさせて興味津々な様子で覗き込んでくる二人の男の子と目が合った。
「パパのお仕事を手伝ってくれている鷲崎遥さんだよ」
奥から信孝が姿を現した。
「息子の晴と未来だ。二人共ご挨拶は?」
「はれだよ、えっとぉ……ごさい」
右側の男の子が片方の手をパーにして笑顔で答えた。
「……」
片やもう一人の男の子は恥ずかしいのか信孝の服を掴むと背中に隠れてしまった。
「未来はこの通り人見知りで恥ずかしがりやなんだ。晴より一つ下の四歳だ」
優しい笑みを浮かべながら晴と未来の髪を柔らかく撫でた。
「まぁ新婚なんだ。遥を片時も離したくない直矢くんの気持ちも分からないわけじゃない」
てっきり怒られると覚悟していただけに、調子抜けしてしまった。
「とりあえず顔を洗ってこい。あと、首筋のキスマークどうにかして隠せ。意外と目立つから」
「キスマーク……?」
信孝に言われ首筋に手を置く遥。
朝のことを思い出し真っ赤になった。
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