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『ちょうどバイトが終わったところ。何かあった?』
「ここからは遠くてよく見えないんだけど、なにわナンバーの車がうちの前に停まってるの」
『パパ今すぐそこから離れた方がいい。いつも寄るコンビニで待ってて。急いで向かうから』
なにわナンバーと聞いて直矢の声色が変わった。
「うん、分かった」
電話を切ると、すぐに信孝にも連絡をいれた。
ここ一体を縄張りにする暴力団の組長と知り合いだと前に聞いたことがあったからだ。
信孝さんって一体何者なんだろう。
実家は確かに暴力団かも知れないけれど、それにしても顔が広すぎる。
『どうした?また忘れ物か?』
「違うんです。うちの前になにわナンバーの車が停車してて」
『さすが浪速の好色狸親父。噂通り鼻がきくな。まずは安全な場所に移動しろ、いいな』
「いつも寄るコンビニがあるから、そこで直矢を待とうかなって」
『それがいい。俺もすぐ向かう。なるべく人が歩いている通りを行け、何かあったら大声で助けを求めろ』
「はい」電話を切りスマホを握り締めると、辺りをキョロキョロと見回す遥。
誰もいないことを確認して、警戒しながら移動を始めた。
戸籍上、鷲崎の゛弟゛ということになっている遥。自分の身は自分で守れ、組に迷惑を掛けたら承知しないぞ、そう鷲崎に言われ護身用にと渡された折り畳み式のナイフを常に持ち歩いていた。
ポケットに片手を突っ込みナイフの柄の部分を握り締めた。
大丈夫、僕だってやれば出来る。
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