直矢の過去

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「パパと同い年なんだけど、すっごくしっかりしてて、優しそうな人だった。直矢も気に入ると思うよ」 遥をチラッと見る直矢。 幸せそうな顔に虫酸が走った。 人がどんな気持ちでいるか全く分かっていないこの人は。 「………したの?」 「え?何?聞こえない」 「だから、したのかって聞いてるんだよ。その女と」 「な、直矢!」 茹でタコみたく遥の顔がさらに真っ赤になった。 「覚さんに言われて、その日のうちにホテルには行ったけど、でも、その………」 急に歯切れが悪くなる遥。 「結局出来なかった」 蚊の鳴くような声でポツリと呟いた。 《良かった》直矢は内心そう思いながらも、気にすることないよ、また次頑張ればいいだろ?偽りの笑みを浮かべ励ました。
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