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遥の事情
あの時直矢の気持ちに気がついてあげれば良かった。何で気付かなかったんだろう。十年も一番近くにいたのに。鈍感にもほどがある。
『遥、二つに一つだ。さっさと選べ。俺は待たされるのが嫌いだ』
鷲崎から提示されたのは、吉柳会の幹部の娘のと結婚しそのまま婿養子に入るか、もしくはーー
「お前に一目惚れしたんや」
接待で初めて会ったその日に、ベットに連れ込まれ無理矢理関係を迫ってきた西日本最大の勢力を誇る九鬼総業の若頭補佐のイロになるかーー
『遥、早くしろ!』
イライラし声を荒げる鷲崎に、びくびくしながら遥は答えた。
「あ、あの……吉柳会の幹部の……婿養子に入ります。九鬼さんには、そ、その……」
直矢を守るためなら自分はどうなっても構わない。
でも人として、一人の男として、妻子ある九鬼のイロつまり愛人として囲われるのはどうしても抵抗があった。
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