本当にそうだろうか?

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本当にそうだろうか?

「人間がね生きてると思えるのは歩けることと、口から食べることなのよ」 寝たきりで意識がないとされている女性にある企業が最先端のテクノロジーを使って彼女の今の気持ちを音声に変換するという試みに挑戦していた 意識がないナンテ本当だろうか? この常識を疑わないでいいんだろうか? こちら側の人間に正確に分かると言い切れるのか? 脳のこの部分が萎縮または死滅しているからと言ってこちらの言っていることがわからないなんて絶対にそうなんだろうか? と、いうのがこの装置の開発者のひとりである中村仁の考えだった アメリカで以前脳死と一旦は判定されて、担当医がもう一度検査をやったほうがいいのではと思い細かい検査をした結果脳死ではないとわかり、生還を果たした男性がいた 彼は危うく脳死と判定されてしまうところだった わずかな指の動きを医師が見逃さず再々検査をしてくれたことが運命を分けた 「脳死だな」と医師たちが話しているのを聞いた彼は待ってくれオレはまだ脳死なんかしていないんだと必死に身体を動かして訴えようとしたが身体が動かなかったのだ 生還した彼はその後、研究チームに体験を伝える仕事をした それを聞いた中村がこの装置の開発に乗り出したわけだ 初めての実験に参加してくれたのが冒頭の女性である 全くの意識がないとされているにもかかわらずあんなふうに頭の中では考えているのだ 中村は驚きとともにせめて最後の思いだけでも残させてあげたいと思うようになった 意識が、なく寝たきりとされている人たちを次々と回り今、思っていることを導き出し親族に伝えることを続けた 信じる家族もいれば詐欺扱いされることもあったが中村は自分の信念だけに突き動かされいた 中には自分の死ぬのを家族が待っているのをわかっている人もいたり、反対にもう死なせて欲しいと願っている人もいた 中村には辛い仕事だったが未来の為に数多くの成功データが必要だったのだ 人間の尊厳はどこにあるのか? 中村はいつもそれを胸に今日も患者を回り続けている
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