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僕 ただ一人の存在 それは侵されることのない権利のようなもの 自分の存在に甘えるな、なんて そんなこと知ったことではないけど まあ、僕がここでぺらぺらと何か話している その事実だけで満足してもいいと思える もちろん、この言葉たちが、その羅列が 君たちに届いていればの話だが ああ、疑っているわけではないんだ 気を悪くしたのなら謝るよ いや、そうじゃない 話を聴くとか聴かないとか、そんな問題ではないんだよ なんだろう、もっと個人的な話なんだ もっと個人的な何か それが何なのか?僕には分からない だとしても、僕には関係がない 問題は 届くか 届かないか それだけの話 君が聴いていようが聴いていなかろうが関係はない 聴く聴かざるに関係なく、言葉は届きうる 君はそれをただ受け取るだけでいい 僕にできることは、言葉を紡ぎだすこと 君にできることは、言葉を受け取ること 少し、話をしよう 話なら散々しているだろう、って? 別に話があるんだよ 君に話したくなったことがね とは言っても、まるっきり違う話というわけではない なぜなら、これは僕の存在証明の話だからだ 存在について、僕の戯言を聴いてもらいたい ところで、君は今、自分が存在していると思うかい? 僕は思うんだよ 君が「自分は存在している」と思うとき、確かに君はそう思っている 君は自分を認識している 認識というのは頭のはたらきによって為されるものだ その頭のはたらきが信用できない 何しろ僕は疑い深いからね そりゃ自分の頭だって疑いたくなるさ ああ、理由を聞きたいかい? それも無理ないかな、やっぱり 自分の考え、自分の頭、自分自身を疑うなんて 正気の沙汰だとは思わないかもね 自分自身のことについて自分が考える時、そこにバイアスがかからないと言えるかい? そういうことだよ 人の頭は、程度の差こそあれ自分のことを婉曲して認識する それならば当然、自分が存在していないのにそれを存在していると認識し得る 無いとは言えないだろう? さて、自己による自己の認識はアテにならないとしよう それならば当然、他者に自己を認識してもらうしかない 認識されることによって僕は存在する 存在が確認される 当たり前のことだ 僕たちはいつも、そうやって互いの存在を確かめ合っている 確かめ合って生きている 僕はそこが信用ならないんだよ 僕にはそれが、他人がいなければ人は存在できやしないと言ってるようにしか聞こえないのさ 僕がいる、君がいる 僕がいて、君がいて 僕が君を認識しなければ、君の存在はなくなる 君一人消すくらいわけないってことさ 人の存在なんて、そんなもんさ まあ、だからこそ信用ならないんだけどね 君は、自分の存在を証明できるかい?
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