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そして次に諒のリードでブルグミュラーの『アヴェ・マリア』の宗教的で敬虔なコラールがゆっくりと静かに慎一との連弾を導いた後、慎一の奏でるグノーのバッハ平均律プレリュードの伴奏に諒の『アヴェ・マリア』のメロディラインで連弾が導かれ、その後、ウォルター・スコットの名高い叙事詩『湖上の美人』に歌曲として曲を付け有名になったシューベルトの『アヴェ・マリア』が諒の伴奏に慎一がメロディラインを乗せ、崇高な連弾の音色が響き渡った。そして、最後に慎一が奏でるカッチーニの切なく甘い旋律のピアノソロの伴奏に諒の『アヴェ・マリア』を繰り返し唱える歌声が力強く高らかに響き渡り、サロンは静粛な祈りの気持ちに包まれた後、拍手喝采に包まれた。
演奏の間中、感動で目を輝かしていた萌香だったが、最後の方は『アヴェ・マリア』を歌う諒をじっと見つめ、感極まったように涙を浮かべていた。そして、諒が歌い終えると舞台に駆け寄り、諒の胸に抱きついた。
「パパ!ありがとう!」
大きな声で叫ぶと萌香はそのまま泣きじゃくった—。
慎一と諒のクリスマスコンサートに集まり、ふたりの演奏に聴き入った人たちが皆、拍手喝采を送りながら、無邪気な萌香に温かなまなざしを注いでいた—。
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