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「…ねぇ、本当に良かったの?」
思わず出た問い掛けに、彼女は首を捻った。
まるで『今更何を言ってるんですか』とでも言うように。
「私は先輩の全部が好きです。良いも悪いもありません」
「…意外とがさつで、嫉妬深いのに?」
「勿論です。可愛いじゃないですか」
「料理出来ないし、掃除も下手なのに?」
「そ、それは頑張りましょうよ!」
「……わたし、女の子だよ?」
彼女は答える代わりに、わたしに顔を寄せて唇を重ねた。
甘い彼女の匂いが、鼻と口を抜けて身体に流れていく。
…ああ、そういやこんなやり取り、あの日もしたな。
思い出して、わたしは頬が熱くなった。
「大好きです、先輩」
「…いい加減、名前で呼んでよ」
「えへへ、先輩は先輩だからいいんですよ!」
とびきりの笑顔で、彼女が幸せそうに笑う。
わたしは彼女の頭を撫でて、もう一度キスした。
《了》
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