彼女のラブレター

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 先輩へ。  最後になるかもしれないので、こうして手紙をしたためさせて頂きました。  直接話が出来ない情けない私を、どうか許して下さい。  先輩に初めて会ったのは、入学式の日でした。  下駄箱で迷っていた私に声を掛けてくれましたよね。  あの時、教室が解らなくて困ってたんです。私、受験と一緒に引っ越してきたから、友達とかも全然いなくて。  緊張と心細さで、もうちょっとで泣くとこでした。  あの時の先輩、本当にかっこ良かったです。堂々として、優しくて。  それからずっと、先輩のことを見てました。  色んな人に話を聞いたり、廊下を通るのをずっと待ったり。  書道部に入ったのも、先輩がいたからなんですよ。本当は、書道なんて全くやったことなかったんですから。  何もかも初めてで、正直先輩と一緒にいたいから入ったんです。  でも、先輩言ってくれましたよね。  私の字、優しくて可愛いって。  今だって、上手くなった訳じゃないけど、先輩がそう言ってくれたから部活続けてこられたんです。  だから、先輩が褒めてくれた字で伝えます。  私、先輩のことが好きです。  きりっとした目も、筆を持つきれいな指も何もかも。  勝手なことばっかり書いて、ごめんなさい。  困らせるのも解ってます。受け入れられないのも解ってます。  拒絶されるのは怖いけど、仕方ないですよね。  時々、本当に時々でいいんです。  バカなことをいう奴がいたな、って思い出して下さい。  さようなら、先輩。  卒業しても、お元気でいて下さい。
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