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埋没
その後、なんとかどうにかレオニールを倒すと、姫は別部隊の仲間と合流すると言うので、俺たちは姫と一旦別れることとなり、二人で移動を始めた。
途上、ガード下で中に人でも埋め込まれているかのように、女性の尻が突き出ている柱を見つけた。憂亜に尋ねると、
「ああ、これね。本当はここにサラ姫とシーラ姫の姉、セーラ姫が配置されてたんだけど、街の再開発工事の結果、柱の中に埋まっちゃったのよね~。そのせいでセーラ姫関連のイベント、全部進行不能で終了よ」
とのこと。ケツだけ姫の異名が付きそうな悲劇であった。
「ま、セーラ姫なんてケツが出てる分まだマシよ。工事の結果、完全に埋没しちゃったキャラだっていくつもいるんだから」
「ケツが出てる分マシなんてセリフは元来この世に存在しません」
そんな風にしばらくウロウロしていると、俺たちの前に突然、シーラ姫の部下を名乗る兵士風の男が現れ、サラ、シーラ両姫が魔将軍ヴェルグに囚われてしまったことを告げてきた。
「来たわね。レオニール戦後、一定の距離を歩くと始まるイベント、『囚われの二美姫』が。魔将軍ヴェルグは一度見た技を見切り次から必ず防いでくるわ。加えて、その技を盗み自分のものとして使ってくるから下手な立ち回りはできない強敵よ」
「おお、ギミック満載のボスか。燃えるな」
そうして憂亜の説明に血をたぎらせながら、彼女の案内によりボスの所在地まで来た俺が目にしたものは――
民家の外壁と外壁の間のわずかな隙間にギチギチにはさまって潰れかけている魔将軍ヴェルグの姿だった。
「やっぱりここも制作段階では空き地だったのよ」
聞き慣れた説明をする憂亜。
「この状態で技の見切りやカウンターは?」
「できないわ。身動き一つとれないもの」
「…………」
設定上は面白い戦い方をする強敵だったはずなのに……。
そうして、俺は家々の隙間に剣を刺し込み、突っつきまくることによって無傷でヴェルグを打倒することに成功した。
「二人の姫はこの奥にいるから」
全く味気のない決着だった。が、まぁ姫らを助け出せるのはよしとしよう。
……と思った俺だったが、憂亜の口から聞いた言葉に何か違和感を覚えた。ん? この奥?
目を凝らし隙間の奥をよく覗き込むと、二人の姫がそこでギチギチに挟まっていた。
左右から顔を圧迫され、ひょっとこ口になって挟まっていた。
「……え? 囚われのって、こういうこと?」
「ちがう」
「ですよね~。……え? 助け出すことはできるの?」
「ムリよ」
「ええ~……」
不在じゃ話が進められない物語上の重要人物だったはずなのに。姫様たち。
これで一体、この先物語はどうなってしまうのでしょうか。皆目検討もつかないがしかし、なんにせよ一つ言えることがある。やはりこのゲームが前代未聞のクソゲーだということは間違いがない。
(終)
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