二年目

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その夜遅くに誠一は帰宅した。 すぐにシャワーを浴びに行く。 音が聴こえてソファでうたた寝していた愛子は目を覚ました。 寝間着を着ながら、タオルを頭に乗せて誠一がリビングに入って来た。 「おかえりなさい。」 暗闇で声がするから誠一は少し驚いて部屋の小さな電気を点けた。 「愛子…。まだ起きてたのか?寝てていいんだぞ?」 「あなたが働いてるのにそういうわけには…。何か飲む?お腹は空いてない?」 キッチンに向かい話すと、 「水くれる?」 と誠一は答えて、ソファに座った。 水を入れたグラスを誠一の前のテーブルに置き、床の上に座った。 「お疲れ様。今日ね、お義母さまがいらしたのよ。」 「へぇ…。来る前に連絡は?」 水を飲んで興味なさそうだった。 「それが、お義母さま、お友達と駅前でお約束していて、急に予定が入ったってキャンセルされてしまわれたって。」 「へぇ〜。」 「おかしいの。駅前であなたによく似た人を見て、隣に女性が居たから夫婦でお出掛けだと思ってここには居ないと思ったのに来たんですって。ふふっ…それなら来ても居ないのにね?」 愛子は誠一のドキッとした顔を見逃さなかった。 「へぇ…お袋も変なとこあるな?俺は仕事だって言うのに…。」 「グリーンのジャケットで、隣の女性も派手な感じだったからよく考えたら雰囲気が私達とは違うわねって。他人の空似、なんて言ってみえたけど、お義母さまが間違える位なら会ってみたいわよね?」 「そういうのは…会わない方がいいって言うぞ。」 珍しく会話が成り立った。 (……やっぱりそうなんだ…。) そう思い、もうひと押ししてみた。 「そうかもね?ねぇ、今度一緒に駅前に買い物行かない?あなたもたまにはグリーンのジャケットでも買いましょうよ?似合うと思うわよ?」 「馬鹿言うなよ。仕事で着るスーツでいいよ。もう寝るぞ、おやすみ。」 「おやすみなさい。」 寝室に向かう誠一を見送った。
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