四年目

3/5
7674人が本棚に入れています
本棚に追加
/253ページ
初日の相談では一方的に愛子が話をして、黙って聞いていた結城先生が最後にまとめてそれを話して終わった。 2回目も同じ様な感じだったと思う。 5回目ともなると大分落ち着く。 支離滅裂な話も減って来たと思うし、今日は新たな決意もしていた。 「おはようございます。」 午前11時過ぎ、愛子は結城弁護士事務所のドアを開けた。 受付にいる女性がすぐに笑顔で対応してくれる。 席から立ち上がり笑顔で愛子を迎えた。 「おはようございます。笹嶋様。お約束は…11時半からですね。中でお待ち下さい。」 「ありがとうございます。瀬尾さん。お子さんどうでした?」 「はい、もう元気です。手に負えない反抗期で…。」 受付の瀬尾は挨拶をして愛子をソファに案内した。 瀬尾は40代後半の女性で中学生の子供がいる。 パートで受付をしているそうだ。 柔らかい笑顔で不安な愛子を迎えてくれる心遣いの出来る女性だった。 結城が忙しい時など、瀬尾は世間話で愛子の相手をしてくれていた。 「受付は?」 と、心配して聞くと、 「ここから見えますから大丈夫。電話が鳴れば行きますし…。あと、私は弁護士資格はないですから、お話は無料ですよ?」 と小さな声で話すのが印象的で好感を持てた。 「笹嶋さん、いらっしゃい。」 奥の部屋から結城先生が顔を出されて、前に座る。 席を立ち頭を下げて挨拶をする。 「おはようございます。時間が少し早くて…お待ちしていますので…。」 「ああ、いいのよ?終わったから。始めましょうか?」 と、愛子に座る様に手を差し出した。
/253ページ

最初のコメントを投稿しよう!