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一年目
結婚して一年目、結婚記念日。
「ねぇ、今日は早く帰るでしょ?」
新聞を読む夫に愛子は話し掛けた。
返事がないから、新聞を奪い取る。
「お!おい〜。」
怒りはしない、困った顔をする。
「だって話してるのに!」
「分かったよ!」
笑いながら誠一は食事を食べ始めた。
「今日は早く帰るでしょ?」
「うん?あ!そうか、結婚記念日か。」
「そうよ?忘れてたわね?」
ジーっと見つめた。
「覚えてたよ?日付けを勘違いしてた。明日かと思ってたよ。早く帰るよ。花束持ってな?ワインがいいかな?」
「ほんと?じゃあ、ワインに合う料理作るわね?お肉?お魚?」
「うーん…お肉にするか?赤ワイン見てくるよ。」
「分かった。楽しみにしてるわね?」
愛子は赤よりも白ワインの方が好きだったが、お肉は赤ワインと決めている誠一に合わせていた。
愛子自身はお肉料理に白ワインで構わないと思っていたのだ。
この頃までは幸せで疑った事もなかった。
住まいは結婚を機に夫が購入したマンション。
5LDKの贅沢な住まいで掃除が大変だけど、いつか子供が出来たら子供部屋も必要だし大きいのに文句は言えない。
幸せだと思っていた。
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