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四年目
いつも通りの朝を迎えて、誠一を玄関で送り出す。
今日は水曜日だからノー残業デー。
「今日残業だから遅くなる。夕飯要らないから。」
妻は何も知らないと思っているから平気で嘘を吐く。
(何の残業なのかしらねぇ?ご奉仕して、プレゼントまで渡して、夕食は作ってもらえるのかしら?ご苦労な事ね?)
最近、自分の思考回路がおばちゃん化していると思いながら愛子は笑う。
自分も支度をして最終確認をする。
「洗濯干した、鍵かけた、ガス閉めた。スマホ、おっけ。」
バタバタと出掛けて行く。
駅前まで出るのにバスで30分かかる。
バスを降りると愛子は携帯の電源を切った。
自分と同じ事を誠一がしているとは思わないが念には念をだ。
結婚三年目、紹介された弁護士事務所を訪ねてから、ひと月に一度ペースで訪れていた。
居心地のいい空間で、頼りになる姉御肌の弁護士さんだった。
30分5千円の相談料さえも安く感じるほど、どんなカウンセリングよりも愛子には効果があり、頼もしかった。
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