父 帰宅

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優一を寝かしつけている間に、誠一は後片付けをする。 茶碗を洗い終え、手を拭きながら振り返った。 「あ、そうだ。親父が帰って来るんだ。」 「えっ!お義父さんが?」 「うん。昨日、連絡があったって。多分、今日明日にもお袋から連絡があると思う。また無理を言うだろうから、断っていいから…。」 帰り支度をしながら、鞄を手に取り、誠一は言う。 「断って…って。明子さん、どの程度報告しているのかしら?」 「う〜ん。電波届かないとこにいたらしいしなぁ。まとめて空港でメール見る感じじゃないかな?」 「電波届かない…。相変わらず…なのね…お義父さん。」 「マイペースな人だし…熱中すると周り見えない人だからね?まぁ、あの父にしてあの母有りだな?あ、玄関の鍵はすぐ締めて?優一〜、良い子で元気でな?また来週な?」 優一に擦り寄り、人差し指で頬をチョンチョンと触り玄関に向かう。 「電波届かないとこって……何処にいたの?」 思わず優一を抱いて玄関まで行く。 「んー?聞いた話だと…タスマニア?」 「…………届かないの?」 「奥地の方だと?よく知らないが…。じゃあ、おやすみ。」 玄関のドアノブに手を掛けた誠一のスーツの背中部分を引っ張る。 「ちょ…明子さんには?週一でここへ…優一の顔を見に来てる事話してあるの?」 「いや?煩そうだろ?期待されても愛子、困るだろう?」 振り返りそのままの体制で誠一は答えた。 「……そうね。復縁とか言われても……困るわ。」 あの義母の迫力に負けそうな気がしていた。 「暫くは内緒で…。愛子に無理強いはしたくないし、お袋に押されて復縁を決断されても俺も嫌だし…。」 「そもそも、復縁するとか言ってないし?」 冷たい目を誠一に向けると、じゃあ、と言いそそくさと帰って行った。 (お義父さんて、確か大学の先生で、早めに引退されて生態系のフィールドワークとやらでアルバイトされているのよね?元気なうちに世界の生き物を見たいと言って、家を飛び出したあんぽんたん…と、明子さんが出産の時にうちの母に話してたものね。) 優一を寝かせて、ぽんぽんと叩く。 「………何年帰ってないんだっけ?」 最後に会った記憶を辿る。 「う………やばい。2年目のお正月しか思い出せない…。」 まさか、5年も外国に行きっぱなしとかあり得ないだろうと考えて、思い出そうとした。 明日、明子から連絡があって、話が合わないと困ると思ったからだ。 しかし、いくら思い返しても、2年目のお正月しか思い出せなかった。
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