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「はぁあ!俺をガキ扱いするんじゃねぇ!」
痛みに堪えて両目を無理やりこじ開けると、薄ぼんやりと見えるそいつの細い手首を掴んだ。
軽く引くだけで、その女々しい体はいとも簡単に手繰り寄せられる。
つまんでいただけのタバコが、揺れた拍子に床へと落ちた。
そいつは何も言わずに、冷め切った目で俺を見据える。
どいつもこいつも、俺のことを馬鹿にしやがって…
その襟元を掴み上げ引っ張ると、腕から肩、鎖骨へと向かって走る今にも動き出しそうな龍の刺青が視線を奪った。
その険しい眼差しが、コイツに手を出すなと脅しているようだ。
鱗の一つ一つまで細部に亘り美しく、勇ましい。
そいつの肩を抱く龍が羨ましくて、欲しくて堪らなかった。
「言え!それは誰に彫ってもらった。そいつの場所を教えろ!」
「…いないよ」
「はぁ!?」
掴まれた手首を嫌そうに引っ張るが、弱弱しくて話にならない。
「ここにはいない。三年前にどっか行っちまった。…今頃、野垂死んじゃねぇの」
…そんな、せっかくこんなところまで来たのに。
これでは、今までと何も変わらない。
「……嘘言ってんじゃねぇよ」
靴のまま家の中に押し入ると、カビ臭い畳を踏みつけ、そいつを床に叩きつけた。
「痛ッ…っ」
「どこに居んだよ…吐け!知ってんだろ!金だってあるんだ、俺のっ」
「その金は…どうやって稼いだんだよ」
ニヤリと目を細めて男は嘲笑う。
驃は見抜かれたように表情を硬くした。
「あの人は…汚れた金で人の体に痕は付けない。俺もそうだ、分かったら諦めて出直してこい」
「…冗談じゃねぇよ」
そいつの薄い肩を肘で押さえつける。
痛みにその口から呻き声がもれた。
「俺に指図するんじゃねぇ!」
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