26人が本棚に入れています
本棚に追加
「へぇ、アゼカって言うの。これ彫った奴」
「止めろ!放せッ」
騒がしくなってきた、そいつを押さえる手に力を入れる。
どんなに足掻こうと、細身のガキは唸り声を上げることしか出来ない。
ふと視線を下に向けると、その左腰にズボンに隠れて黒い刺青が見えた。
こいつはアゼカの作品用紙でもやっていたのか?
好奇心で刺青を隠しているズボンを引き下げると、そいつは驚きに情けない声を上げる。
「なにすんだ!放せよっ!」
うるさいキャンバスだ。
少しは黙ってられないのか。
白く細い腰には、真っ黒なバラが二輪花を咲かせていた。
その見た目は上の女神と異なり、毒々しい気配をまとっている。
黒バラ…前に付きやった奴から、ねだられたことがあった。
確か意味合いは、相手からの束縛と…永遠の深い愛情、とか言っていたか
束縛されて何が嬉しいんだ?とその時は思ったが、
これで何となく腑に落ちた。
「お前、アゼカの女やってたのか。でも三年前に捨てられちまって、今もそいつのこと待ってるって訳だ」
「ッ…だとッ、捨て…られてない。あんたに、言われる筋合いもない!」
最初のコメントを投稿しよう!