刺青師

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「へぇ、アゼカって言うの。これ彫った奴」 「止めろ!放せッ」 騒がしくなってきた、そいつを押さえる手に力を入れる。 どんなに足掻こうと、細身のガキは唸り声を上げることしか出来ない。 ふと視線を下に向けると、その左腰にズボンに隠れて黒い刺青が見えた。 こいつはアゼカの作品用紙でもやっていたのか? 好奇心で刺青を隠しているズボンを引き下げると、そいつは驚きに情けない声を上げる。 「なにすんだ!放せよっ!」 うるさいキャンバスだ。 少しは黙ってられないのか。 白く細い腰には、真っ黒なバラが二輪花を咲かせていた。 その見た目は上の女神と異なり、毒々しい気配をまとっている。 黒バラ…前に付きやった奴から、ねだられたことがあった。 確か意味合いは、相手からの束縛と…永遠の深い愛情、とか言っていたか 束縛されて何が嬉しいんだ?とその時は思ったが、 これで何となく腑に落ちた。 「お前、アゼカの女やってたのか。でも三年前に捨てられちまって、今もそいつのこと待ってるって訳だ」 「ッ…だとッ、捨て…られてない。あんたに、言われる筋合いもない!」
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