刺青師

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まぁ、そうだろう。 こんなの俺の遊びでしかない。 バラの上をなぞると、敏感になっているのか指の動きに合わせて面白いほどよく反応する。 両手を拘束しているため、自分で口を押さえることも出来ない。 「ッ!あっ、ンッッ。やめてっ、そこ、触らないで…ッ」 「なんだよ、入れられてる時のこと思い出したか?勃ってるぜ」 「なッしてない!」 「どうだろうな」 だらだらとしたスエットは、確かに上から見ても分かりづらい。 だがゴムも伸びきってしまっているそれは、少し引っ張れば簡単にずり落ちた。 勢い余って下着まで一緒に下げると、(しらかげ)はバカにしたように笑う。 「…半勃ちってところか?」 「ッツ…変態野郎ッ!お前の眼球にタトゥー堀込んでやる…」 ギロッと鋭い瞳が睨み付ける。 よくそんなあられもない姿で、恐ろしいことを言えたものだ。 自分より弱い奴をいたぶることほど、楽しい遊びはない。 驃はゾクゾクと身を震わせる。 「勝手におっ勃ててる奴に、変態呼ばわりされたかねぇな。 アゼカに捨てられちまって寂しいんだろ? なんなら、俺が慰めてやろうか?」 そいつの顔からサッと血の気が引いた。 睨み付ける目に、ジワッと涙の膜が出来る。 「…ッ俺と、やりたいならッ、それなりのテクと金は持ってんだろうな…」 「金は持ってるって言ってるだろ?まぁ、汚れた金だがな。 安心しろよ。あんたの顔好みだし、暴れたりしなきゃよくしてやるぜ」 せっかく、こんな騒がしくてドブ臭い街に来たんだ。 何もしないで帰るのも癪だ。 こんな辺鄙(へんぴ)な所にいる奴一人抱いたところで誰も文句など言いやしない。 街で女を買うより安くすむだろうし、抱き潰してしまえば今日眠る場所まで手に入る。 俺にとって悪くない話だ。 こいつのあえぎ声が、発情期中の猫並みに煩くなければだが。
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