最後の手紙

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 私は席を立って玄関に行き、壁の一角にある小さな扉の取手を開いて、投函された沢山の郵便物を箱から出そうとした。  すると、私の手を滑りぬけ、一枚のはがきが音もたてずにひらひらと、磨きこまれた床の上に着地する。  腰をかがめて拾おうとしたとき、見るともなしに文面を見てしまい、乱れた文字に衝撃を受けた。 00299459-8571-4556-a0f4-9de105e21966 「友よ、今までありがとう。これが最後の手紙になるだろう。  これからは、思い出の中で人生を分かちあおう」  裏を返して見ると、代筆を頼んだのか、きれいな文字で父の名前と、差出人の名前が書いてある。見てはいけない物をみてしまったような気まずさと、切なさが同時に押し寄せ、慌ててはがきを郵便物の一番下に隠すと、素知らぬ顔でリビングに持っていった。
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