ハンバーグ定食

6/23
前へ
/407ページ
次へ
トロトロと、鈍い足取りだった。大手前通りの歩行者通路を歩く。  カフェやコンビニ、用品店などが建ち並ぶが、まるっきり今の私の視界には、それが入って来ない。  徒歩、二十分。私の家は、姫路城の見える位置にあった。周囲は、一般家屋が立ち並ぶ住宅街。私の家も、四十坪ほどの敷地にある、一戸建ての家。  ブルーの屋根瓦に、灰色の外壁。ごくごく普通の家だった。 「ただいま」  私は力ない声で、玄関のドアを開けた。 「文乃、ちょっと、き」  母は帰ってくるなり奥から顔を出し、私に手招きする。『き』は、播州弁で『おいで』と言う意味だ。
/407ページ

最初のコメントを投稿しよう!

484人が本棚に入れています
本棚に追加