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トロトロと、鈍い足取りだった。大手前通りの歩行者通路を歩く。
カフェやコンビニ、用品店などが建ち並ぶが、まるっきり今の私の視界には、それが入って来ない。
徒歩、二十分。私の家は、姫路城の見える位置にあった。周囲は、一般家屋が立ち並ぶ住宅街。私の家も、四十坪ほどの敷地にある、一戸建ての家。
ブルーの屋根瓦に、灰色の外壁。ごくごく普通の家だった。
「ただいま」
私は力ない声で、玄関のドアを開けた。
「文乃、ちょっと、き」
母は帰ってくるなり奥から顔を出し、私に手招きする。『き』は、播州弁で『おいで』と言う意味だ。
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