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父は最近、髪が薄くなってきている。どうしようか悩ましい顔をしながら腕を組み、下を向いていた。
丸い顔を母は引きつらせていた。私は無表情のまま、何も言えずにいた。
「あんたには、国立大に行く能力がなかったんや。もう諦めなあかんで」
私の傷ついた心に、塩を塗り込ませるようなことを言う母。父も同じ意見なのだろう。無言ではいるが、視線は右側に向けたまま厳格な表情をしている。
「いやや。お願い。もう一年だけチャンスをちょうだい!」
私は目を瞑り両手をパン! と勢いよく合わせて、両親に頭を下げた。母の言うことは一理あるが、まだまだ断ち切れなかった。
「分かった。一年だけチャンスをやろう」
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