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「さ、どうぞどうぞ」  背後からお菊さんの声がして、振り向く。ドアの音も、ベルのお音も鳴らなかったから、妙に感じた。お菊さんの隣には、女性がいた。  花柄のワンピースに、白い腰エプロン。昭和の、前掛けと言ったらいいのだろうか。どこかレトロ感が溢れている、昔のお母さんといった女性だった。年齢は正直言って分からない。  少し長めの黒髪を一つにまとめていた。四十代にも見えるし、六十代にも見える。 「母さん!?」  鈴木さんの頓狂な声が響いた。 「えぇっ!?」
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