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 お菊さんと、定年間近くらいの年の男性が、薄いグレー色の背広を着て入ってきた。お菊さんは客引きをしていたようだ。 「懐かしいなぁ。この店まだあったんですね」  男性はキョロキョロと、懐かしげに嬉しそうに目を細めて、店内を見渡した。 (えっ)  私は岡本君と、目を見合わせた。  その質問に関しては、お菊さんは答えずニッコリ微笑んだだけだった。 「お好きな席へどうぞ」  素敵な笑顔で、お客さんをもてなすお菊さん。  その男性は、岡本君が座っている席をひとつあけて、座った。
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