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2 中国ファンドの甘い罠
3月5日 午後3時
「だからお願いしますよー!田中さん。絶対大丈夫だから」
「私は株なんかやった事おまへんねん、あかんて。だいたい金があらへんがな」
「それなら口座に中ファン(中国ファンドの略)があったでしょう。あれを解約して株の代金に当てましょう。そして株が上がったらまた売って、もとの中ファンに入れておいたらいいじゃあないですか。名案ですよ、金利稼ぎだと思ってここは一発いきましょう!」
「しゃーないなー、ほなそないしとってんか。」
なんと都合のよい論法であろうか。おそらく午後3時ごろにかかってくる電話である以上、仕切り玉で支店で余った株の押し込みであろう。
3時から5時までの証券マンの電話は特にご用心!!
昭和58年より始まった中期国債ファンドは、「証券会社にも銀行と同じ様な安心してお金を預けられる商品があれば、今までのように敷居が高くなくなり、顧客も増えるはずだ」という客引きのための戦略商品であった。
その成果はテレビの派手なコマーシャルも手伝って予想以上に人気が出た。
実際、銀行をも脅かすだけの預かり高となり短期間で急成長したのであった。
しかし元来「ファンド」というものは、不特定多数の投資家から金を集めてそれを約束した商品に投資してその配当を戻すもので、基本的に元本が保証されたものではない。
ただ中国ファンドはその投資先が、比較的安全な「中期国債」であるというだけの事である。
その証拠に、必らず中国ファンドのパンフレットには、非常に小さな字で「元本は保証しない」旨がうたってある。
しかし証券会社の商品の中では、一番元本保証に近い商品といえよう。
後述の商品ラインアップに比べて「超安全君」と呼んでもさしつかえない。
その甘い罠にかかってうっかり中国ファンドに預けようものなら、よほど断わる勇気がなければ先ほどの田中さんのように、買いたくない株の買い付け代金にされてしまうのである。
証券マンからすると証券会社の客はすべて「株を買ってくれる客」で、今は「たまたま中国ファンドに入れているだけ」と身勝手な事を平気で考えているのだ。
こわいこわい
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