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6 支店ノルマ
3月8日 午後5時
「おーい6時にラインがとまるから早く入力しろよ」
「うちの支店は現在入力ベースで70%だからな。関西地区は85%平均、全国は80%だ。」
「あと1時間でなにがなんでも残りの30%をつめろ!絶対おとすなよ!」
投資信託の締切日のほのぼのとした田園風景である。
ここでいう入力ベースとは全く嘘のない数字の事で、実際の顧客の承諾をえた(当たり前であるが)注文の出来高である。
当時の投資信託の規模は1ロット1500億円であった。
これを支店数約100で割ると一支店あたり15億円のノルマとなる。
これを支店内でさらに分けられ投資相談課、営業課、外交課で3分されそれぞれ5億ずつ。
さらに営業課内で課員10名で5000万ずつのノルマとなる。
クジラの解体をイメージして欲しい。
同じように株にしても、転換社債にしても、ワラント債にしても全てノルマ化される。
そしてその達成率を常に申告させられ、他支店との競争意識を煽る素晴らしいシステムになっている。
課員の数字を集計するのが課長、各課長の数字を集計するのが支店長、各支店長の数字を集計するのが地区担当役員、それの総集計が本店である。
お互いがそれぞれの数字を見比べながら、遅れていれば部下を叱咤激怒するのである。
参考までに、当時の証券マンの毎月のノルマは同期に銀行に入社した連中の30倍であった。
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