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一五一十の心理
上がり切った息を整える暇も与えられず、浴室で散々いたぶられた身体を今度はベッドに放り出された。
丹念に水気を拭き取られたから、寒さも冷たさもない。シーツを濡らすことも無い。
それどころか内部から熱を灯され、火照った身体は自分でも持て余すくらいだ。
「も、もう……やだ、すこし、休ませてくれ」
洗うだけにとどまらず指で丹念に解されて、更に既に一度彼の怒張した性器を受け入れさせられた。
浴室の鏡を見るように強制されながらの性交に、羞恥心で頭が焼き切れそう。悲鳴のような泣き声が、反響するのも拷問に等しかった。
「大丈夫だよ」
声だけは優しい。ギシリと男二人分の体重を受けたベッドの軋みと囁き。
宥めるように頬に触れた大きな手。猫にするように顎下を撫でる。
「俺たち若いから、まだできるでしょ」
影が降りて、唇同士が重なる。
くちゅ、ちゅ、と水音と共に口内歯列を蹂躙する舌の動きが脳みそを麻痺させる。
僕のシーツを掴む手を捕らえるように彼のそれが重なって、そのままゆっくりと押し潰すように体重をかけられた。
恭介はそのまま甘く優しい超えて囁き続ける。
「二つだけ質問させて」
「え?」
突然過ぎる。この期に及んで何を質問すると言うんだろう。
しかし僕の返事を待たず、恭介は相変わらず笑わない少し暗い目と弧を描いた官能的とも言える厚めの唇で問うた。
「お前浮気、したよね?」
「う、浮気って……どういう」
とぼけてしまおうと思った。別になんの疚しい事もない。ただ仕事先の後輩と飲みに行っただけだ。君だって合コン行くだろ、って。
「そうそう、俺の基準。二人きりで酒飲みに行ったら浮気未遂。距離が近すぎたらほぼ黒。あと」
そんな事を呟くように言いながら。顎下の手はそのまま首を、頸動脈辺りを丁寧に擦りながら一度言葉を切る。
その数秒の沈黙が怖かった。
まるで、死刑執行を待つ囚人のような。
「……キスは浮気確定、な」
息が止まるかと思った。心の内を丸裸にされたような恐怖と、羞恥に身がすくむ。
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