抱きしめたい

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   月明かりの下。  猫の褐色の肌が何度も震えては絡みつく。  熱くて甘い吐息も絡まって、果てても果ててもキリがない。 「鬼の性欲マジでやべー。もともと淡白なくせに」 「昇進したらもっと強くなるってさー」 「あ!それよりマツコ!一週飛んでた!さんまちゃんのスペシャル録るのに消しただろ」 「ええ!嘘!てかなんで愛の営みよりマツコの方が上なのよ」 「地上波と一緒にwi-fiも拾って欲しいわー」 「人の話を聞け。でも概ね同意」 「でも受信してくれる端末がないかー」 「そのへん発明したらすんごい(ボーナス)貰えるかなー」  ベッドの中で寄り添いながら、窓の外の大きな大きな満月を見詰める。時折、その真円の中をペットとお散歩中の住民達が横切って行く。 「あーあ。俺も空飛べる系のペットが良かったなー」 「やだ。猫はネコ以外認めない。少食で助かるし」 「二軒隣なんて大変そうだもんなー。昼間音波で飛び起きる事あるもん」 「隠形さんが卵から育てた双子ちゃんだし、温かく見守ってやろう」 「ふふ。直生は誰にでも優しい。ちっとも変わらない」 「独占欲も変わらない」 「それは俺もー」  ここは地獄の一丁目。  だけどここにも日常はある。  友情も思いやりも、ロマンスだってちゃんとある。  終わらないロマンスが。 抱きしめたい おしまい
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