奥田民生はCARPファン

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奥田民生はCARPファン

毎日毎日僕はこの一人ぼっちの星で、どうやって阪神ファンという仲間を見つけるか考えていた。 遠い遠いはるかかなたの、地球と呼ばれる星では人間という生き物がいて、野球という競技で争っているという。 それは18人という人間が一つの球を、投げたり打ったりして、勝負するものらしい。 日本という場所の阪神タイガースというチームを熱心に応援している人と話をした。 その阪神ファンの人は「仲間を見つけろ、一人じゃあかん。一人じゃキャッチボールもでけへん」と言った。 僕はその人に、星の外に出てみて仲間を探しますと言ったが、はたして星の外がどうなっているのか、興味もなかったし、出る方法もわからなかった。 3億年考えた。2億年かかって外に出るための乗り物を作った。15億年は失敗の連続で、この星の外に出られなかった。何度も諦めたのだが、仲間という自分と同じ目的を持つ、生命体に出会えるかもしれないと思うと、胸が高まってまた、惑星外にでる乗り物を作り直した。 やっとこの星から出ることができる乗り物が完成し、自分の星の外に出た。 出てみると星々が無数にきらめいていて、このどこかには僕と同じ、阪神ファンがいるのだろうと思った。そうして僕は野球というものを見るのだろう。もしかしたら僕には才能があり、プロ野球選手になるかもしれない。目に見える星一つ一つに想いを馳せた。 一番近い星について、生命体がいないか探索した。一億年ぐらい探したけれど、見つからなかった。残念だった。やっと阪神を応援できる仲間が見つかると思っていたのに。 となりの星を出発して、数々の星を探し回った。どの星も何かしらの生き物がいる形跡は全くなく、どの星もただ岩がゴツゴツしていたり、もっと気体状のどこまでいっても、固体らしきものがない星もあった。 数えられないぐらい年月が過ぎた。何かしらの生命体の痕跡が残る星に行き着いたのは、生まれ故郷を離れてから100億年は経っていた。生命体の手が加えられた石板があった。そこにはその星から見える星図が描かれているようだった。 その石板の星をくまなく。それこそ石のかけら一つずつひっくり返して、みたけれどやはり有機生命体は見つからなかった。 生き物がいなくなった。俺と同じように、阪神ファンを探しに宇宙へ旅立ったのだろうか。それとも、この星の生き物すべて死滅してしまったのだろうか。あるいは俺と同じような旅人でただ、仲間を探して立ち寄っただけだったのだろうか。 生命体を探しているときに、化石を発見した。四足歩行の生き物で、少し首が長く、顔の両側に目が二つ付いている。 その目の間の額のところに、三角錐の鋭く尖った角が生えていた。 この生物がこの星の住人だったのだろうか。見つけたのはその一つだけで、それがどう意味なのか俺には分からなかった。
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