2杯目

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2杯目

「三鳥菜摘くん?」  掃除当番の時間、ひとりで体育館の入り口を掃いていた時だった。後ろから名前を呼ばれて、菜摘はくるりと振り返る。  そこには、短いスカートで派手なアクセサリーをつけた、金髪の女子生徒と……ふんふわのツインテールにリボンをつけた、可愛さを全面にアピールしている女子生徒が立っていた。 「そうですけど……」  名札の色を確認すると、どうやら上級生のようだ。「すぐ見つかったね」「らくしょー」と、そんな言葉か聞こえて、菜摘は彼女達が自分を探していたことを察する。  菜摘は生徒会役員であるため全校生徒の前に立つことも多く、彼女たちがこちらの名前を知っていることは理解できた。  しかし、一体なんの用だろうか。 「あんた、杏莉先輩から彼氏寝取ったらしーじゃん」  一瞬、思考が停止した。  杏莉の知り合いのようで、つまり、彼氏とはカゴメの事を指してるのだろう。だけど、寝取ったなんて、そんな事実はない。 「そんなこと、してません」 「はあ? 杏莉先輩泣かせておいてしらばっくれる気?」  金髪の女子が、ギロリと菜摘を睨みつけてきた。  杏莉を泣かせた……? 彼女を傷つけたのは申し訳ないが……泣いていた様子は、これっぽっちもなかったような。 「あんたなんかが、杏莉先輩と張り合えると思わないでよね」 「本当それ。まじ迷惑だし、杏莉先輩達の周りうろつくなっつーの」  うう、このふたりも杏莉と同じ……。  いやだな、怖いな。と思うと、身体が自然とに後ろへ退いた。  菜摘が下がれば、ふたりは更に威圧的な態度でグイグイと距離を縮め、菜摘を壁に追い込んでいく。  そしてついに…トン、と背が壁にくっついた。  同時に、壁に向かって蹴りを入られ、菜摘の逃げ場を塞がれてしまう。  目の前には、黒髪のツインテールが揺れていた。 「ほらぁ、返事!!!」  突然大きな声で怒鳴られて、ビクゥっと身体が震えた。  でも、彼女達の言うことに頷きたくない。  追い詰められた菜摘は、どうしたらいいのか分からず混乱してしまい……下を向き目を瞑った。  どうしよう。  どうしよう……。 「シカトしてんじゃねーよ!」  ガンッ、と胸ぐらに衝撃が与えられて「ひっ」と喉の奥で声を漏らした。続けて、襟を鷲掴みにし、グイグイと揺らしていく。 「やっ、やめて、離して!!!」  耐えきれず、菜摘は悲鳴をあげた。  だけど……抑えきれなかったのは、悲鳴だけでなく。  同時に、グレアが溢れ出てしまったのだった。  「あっ」と思った時には、もう、菜摘自身ではコントロールができなくなっていて。  それを至近距離でまともに受けてしまった女子生徒は、菜摘から手を離して……その場で膝から崩れ落ちた。 「きゃあああああっ」  悲鳴をあげたのは、金髪の女子生徒のほうである。  菜摘はびっくりして、何もできなかった。  ただただ必死にグレアを押さえ込む。  金髪の女子生徒の悲鳴を聞きつけたのか、すぐに男性教師が現れた。
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