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3.衝撃の事実
前世に縁のある四人が集結した日から一週間が過ぎ、見事に晴れ渡った土曜の朝。私と三沢君、そして浅井先輩を次々と拾いつつ、倉下さんの車は一路上地谷を目指し、高速をひた走っていた。
「何で俺が三沢と一緒に後部座席なんだよ! 次のサービスエリアで席替えすんぞ!!」
「え? もしかして浅井先輩って後部座席だと酔っちゃう体質ですか? いるんですよねー、そういう人。酔い止め飲んで来なきゃ駄目ッスよ。俺のあげましょうか?」
「三沢君も酔う体質だったんだ……」
「バカ! 違ぇーよ!! お前と一緒に座ってんのが嫌なんだよッ!! デカいし暑苦しいし……次降りたら直緒とチェンジな!」
「えぇ!? それなら俺も直緒先輩と後部座席がいいッスよ!!」
「僕は誰が隣でもいいですけど……、移動は5時間位かかるから皆さん、仲良くしましょうね……」
次のサービスエリアで車を止め、小休憩をとることになった。今日は天候も良くまさに行楽日和、気温もぐんぐん上がりそうだ。そんな事を考えていると、アイスクリームを舐めている子供達が視界に入り、私は無意識にそれをじっと眺めていた。
「買いましょうか?」
私の視線に気づいたのか、倉下さんが微笑みながらアイスクリーム店を指差して言う。すぐに返事が出来ずに戸惑っていると、彼はサービスエリアに並ぶ出店へ向かおうとした三沢君にも声をかけた。
「三沢君もアイスクリーム食べる?」
「奢ってくれるんスか!?」
「うん、いいよ」
二人分のアイスクリームを買ってきた倉下さんは、それを私たちに手渡す。三沢君が素直に「ヤッター!」と喜ぶと、倉下さんは更に満足そうな笑みを湛えていた。
「倉下さんの分は買わないんですか?」
「僕はいいんです。眠たくなっちゃうとヤバいですし」
(あれ?)
三沢君と私では、倉下さんの物言いが違うのに気づいた。
(何だろう? 何かモヤモヤする)
そのモヤモヤの原因について考えを巡らせていると、浅井先輩がトイレから戻ってきた。
「あ! アイス食ってる……」
「倉下さんに奢って貰っちゃいました♪」
三沢君の自慢に、先輩はじとっとした目で倉下さんを見る。
「直緒に奢るのはわかるけど、何で三沢まで奢っといて俺の分は買わねーんだよ」
「ん……何となく?」
今にも倉下さんの胸倉を掴みそうな先輩を、「まぁまぁ」と宥める。
「じゃあ先輩、私の一口食べます?」
「!?」
「直緒先輩!?!?」
「大丈夫、こっちまだ口付けて無いから」
「俺は直緒が口付けたとこでもいいけど?」
「待ってください! 僕が浅井君の分も買ってきますので!!」
途端に血相を変えた倉下さんは、そう言って先程のアイスクリーム店まで駆け出した。それを見ながら「アイツ、やっぱチョロいな」と言った先輩の言葉に、三沢君も私も静かに頷くしかなかった。
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