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「おい、倉下とか言ったっけ? 何でお前、直緒と二人でこんな店来てんだよ」
「そうッスよ! 俺達はついでに呼ばれた感じだし、これって倉下さんが直緒先輩を誘ったんスか!?」
「いや、ちょ…まっ……」
「いい歳してJKに下心か!? JKとデートしてデレデレか!!」
直緒が席を離れた途端、響介と三沢は倉下へ集中砲火を浴びせる。
「そそそ……そんなこと無いですよ!! 僕の前世はこう見えても、尚親様側近の加野通孝なんですよ!? 主に対してそんなやましい心を持つなんて……」
「前世知ったの今さっきじゃねーかッ!!」
「そうッスよ! それまでどういう気持ちで先輩と居たんスか!?」
「どういう気持ちって……ただ僕は彼女にお礼をしようと……」
こんな調子での言い合いがわいのわいのと続く間に、直緒がトイレから戻ってきた。
「あれ? 三人とも随分仲良くなってるね?」
「「「どこが!?!?」」」
*
再び四人が揃ったところで、「それで……」と浅井先輩が仕切り直す。
「三沢はあまり夢を見て無いらしいし、前世の立場も側室だから……尚親の死の真相については今のところ心当たり無い、でいいんだよな?」
「え? うん、まぁ……」
「じゃあ、お前は?」
「先輩!!」
何故年下の三沢君は苗字で呼んで、自分より六歳も年上の人を「お前」呼ばわりするのか頭を抱えたが、その疑問はすぐに解けた。
「じゃあ……そこのロリコンは?」
「ロリコン!?」
「違うのかよ? いーから質問に答えろよ」
先輩の発言に三沢君はお腹を抱えて笑っていたが、私は内心
(ロリコンというよりはシスコン……)
と、苦笑していた。そんな私に気付いているのかいないのか、先輩の言葉にショックを受けた倉下さんは、ぼそぼそと小さな声で話し出す。
「僕も実は……井上さんと出会うまでは断片的にしか夢を見てないので、実際のところどういう経緯で尚親様がああなったのかよくわからないし、その後どうなったのかもイマイチわからないんです……。あと、ロリコンじゃありません!」
「てことは……」
前世の記憶を持つ者が四人も集結したが、実際のところは何も進展せず――ということのようだ。先輩と私は目を合わせて、同時に深い溜息をつく。
「やっぱりデカい図書館で調べるしかないか?」
「そうですね……」
私が同意しかけると、思い出したかのように倉下さんが、「それなら上地谷へ直接行ってみるのはどうですか? 僕が車出しますし」と、提案した。
「えっ!? いいんですか?」
「やるな!! 智ちゃん!!!」
「「「智ちゃん!?」」」
あまりの手の平返しに、思わずギョッとして振り返ったけれど、当の本人は既に倉下さんの手を両手で握っている。その変わり身の速さには、私を含めた残りの三人は苦笑するしかなかった。
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